第2章 逢瀬
「…ねえ、リヴァイ」
「あ?」
「あの日のことは、気にしなくていいから…償おうとか、思わなくていいんだよ、あれは、リヴァイが弱かった訳じゃない」
「別にそんな事思ってねぇよ」
「だってリヴァイが、こんな…年下なんか、本気で好きになる訳ないじゃん。もう調査兵団ですらない…」
そう悲しそうに呟くと、お腹に手を当てる名前。
あの時、名前がリヴァイを庇ったとき、名前の内臓は傷つき、即死レベルだった。
その後遺症で、お腹に力が入らない。
全身に力を入れなければいけない立体起動装置は使えないのだ。
そんな名前の手に自分の手を重ねると、リヴァイは抱き寄せるように寄り添った。
丁度、リヴァイの口元は俯く名前の耳元に触れる。
「俺はいつだって本気だ。嘘はつかねぇ。償いでお前に近づいてる訳じゃねえよ…わかるだろ?あれがなくったって、俺は兵士長であるお前の傍に居たがっていた」
「…でも」
「でもじゃねぇよ。これ以上わからねぇようなら、今ここでお前を無理矢理俺のモノにする。それで文句ねぇだろ」
「それは…リヴァイ…」
名前が顔を上げると、体がぴったりくっついているリヴァイの顔がとても近く、その綺麗な顔に見惚れた。
そして、ゆっくりリヴァイの瞳が近づいて…
「…名前」
そう呟く唇に、名前はそっと指を当て、触れるのを拒んだ。
顔を背けると、唇に行き着かなかったリヴァイのそれが髪に触れた。
「いつになったら応えてくれる?」
「リヴァイが勘違いだと気付くまで」
「俺の気持ちは勘違いなんかじゃねぇよ…」
「いいや、恩を感じてるだけ。手に入ったらきっと…」
「もういい。お前のそういうところも含めて、俺は…」
「嘘!」
名前はリヴァイから逃れるために、両手で胸を突き飛ばすと立ち上がった。
泣きそうな顔でリヴァイを見つめる。
「…なんでそんな顔、するの…」
…だって、わたしが愛した人たちは、皆死んでしまった。
わたしがリヴァイを愛してしまえば、リヴァイの命は…
名前は踵を返し、走り出した。
「…!おい!」
リヴァイのその声と同時に、強い痛みが名前を襲う。
「あ…そうだった、お腹…」