第2章 お家。
【二階堂side】
「お兄さんと一緒に、ベッドで寝ちゃう?」
わざとふざけた。
あわよくば...なんて微かな期待はあったけど(笑)
いや、そうじゃなくて。
動揺を隠したくて、わざとふざけた。
自分で"大事な人"なんて言っておきながら、その言葉に動揺した。
すぐ横にある顔が、茹でダコみたいに真っ赤になった。...可愛い表情するんだな、こいつ。
「...冗談だよ♪」
...俺、にやけてないかな?
近くにあったブランケットを手にとって、顔を見られないように「んじゃ、おやすみー。」とだけ言ってそのまま部屋を出た。
暗く、静まり返った真夜中。静かに階段を降りて、リビングへ向かう。そのままソファーには向かわず、キッチンでコップに水を入れて、一気に飲み干した。
自分でもわかってる...。
気づかないふりしてるって。
意味わかんねぇふりしてるって。
でも、認めちゃダメだろ。
記憶なくして、俺が想像もできないくらい辛い思いしてるやつに、優しくしてつけこむようなコトしちゃダメだろ。
それに、警察にまかせとけば、身元もわかって家に帰れるだろうし。だから、数日の我慢なんだ...。
零と離れてしまえば、この感情もそのうち消えるさ...。
だから...、
それまでの辛抱だ...。
空のコップを流しに置いて、ソファーに寝転ぶ。俺もいいかげん寝ないと、明日の仕事に支障がでる。
明日は、仕事の合間を見て...、とりあえず社長に言う前にマネージャーに零のコトを報告しよう。...あ。あいつ着替えとかも全く無かったよな?さすがに下着とかの買い物までは付きあえないし...。そのへんはマネージャーにお願いするか。あとは、寝る場所かぁ...。さすがに連日ソファーはキツいよなぁ...。
あれこれ考えてたら、かなり瞼が重たくなってきた。
あとは、明日考えるか...。
あいつ、ちゃんと寝てるかな...?
とりあえず、今日はもう寝るコトにした。