第3章 奉仕
その後も半田くんの話は続いた。
熊猫神社の祟りの噂は本当で、彼は満月の夜になるとパンダの姿になってしまうらしい。
彼がさっき持っていたペットボトルの中身は、事情を知っている神社の神主さんから頂いた"お清めの水"であり、それを飲めば人間の姿に戻れるという。
狼男なら聞いた事があるが、パンダ男なんて初耳だ。
「………」
何だか現実味が無くてまだ少し信じられない。
けれど彼がパンダに変身したのは紛れもない事実…信じるしかないだろう。
「事情は解った…その話、一応信じる」
「……、ありがとうございます」
「でも…満月の夜の度そうなるんじゃ、今までどうしてたの?」
「俺が変身するのは決まって夜の9時過ぎなんです…。いつもなら絶対家にいるようにしてたんですけど、今日は満月の夜だって事をうっかり忘れて残業を…」
「………」
彼のドジは根っからのものらしい。
普通そんな重要な事忘れる…?
私だったら朝からそわそわして、その事が一日中頭から離れないと思うけど…
「あの……織田先輩…」
「…ん?」
「この事…本当に黙っててもらえますか?」
「………」
念を押すようにそう言ってくる彼。
私は元々言い触らすつもりなどなかったが、少しだけ彼に意地悪をしたくなった。
「うーん…それは半田くん次第かな?」
「っ…」
「私がさっき言った事…忘れてないよね?」
「……、」
隣に座る彼の頬に手を触れる。
そうだ、一応聞いておかなきゃ…
「半田くん、彼女は?」
流石に人のものに手を出す趣味は無い。
もし恋人がいるなら、彼にちょっかいを出すのはやめるつもりだ。
「い、いません…」
「…そう……良かった」
「あの……、俺は何をすれば…」
「そうね…せっかくこんな場所に来たんだし……私の事満足させてよ」
「…え…?」
彼氏いない歴3年…
仕事ばかりの私だって性欲が無い訳じゃない。
自分より6つも年下の男の子を相手にするのは初めてだけれど。
「ぁ…、俺……」
「…やっぱり嫌?まぁ半田くんからすれば、私なんてもうオバさんの部類だもんね」
「ち、違いますっ…!先輩はすごく綺麗な人ですしっ…、俺の憧れで……いや、あの…とにかく嫌とかじゃなくて…っ…」
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