第3章 奉仕
「せ、先輩…?本当に入るんですか…?」
「こういうとこじゃなきゃ、ゆっくり話も出来ないでしょ?」
「そ、それはそうですけど…」
「…何?エッチな事でも想像してる?」
「っ…」
カァッとあからさまに顔を赤くさせる半田くんを見てクスリと笑う。
今私たちはラブホテルの前にいた。
彼が躊躇うのも無理はないが、まだ詳しく話も聞き出せていないし、2人きりになれる条件としては絶好の場所だろう。
(わぁ……最近のラブホってこんなに綺麗なんだ…)
こういう場所に来るのはずいぶんご無沙汰だ。
もっといかがわしい雰囲気の所を想像していたが、中はちょっとしたリゾートホテルのようでとてもお洒落だった。
最近は女子会で使えるラブホテルもあるというくらいだし(彩香情報)、若者が気軽に利用したくなるのも解る。
「さて…それじゃあ詳しい話を聞かせてくれる?」
「……、」
部屋に入ってベッドに腰掛けると、半田くんも怖ず怖ずと私の隣に座ってきた。
「本当はまだ信じられないんだけど……さっきのって現実…なんだよね?」
「………」
私の問いに無言で頷く彼。
それからゆっくりと話し始める。
「これは……呪いなんです」
「…呪い?」
「正確に言えば…"祟り"というんでしょうか…」
「………」
呪い…祟り…
オカルトに詳しくない私にとってはあまりピンと来ない単語だ。
「俺…昔から何をやってもグズでノロマで……おまけにこんな性格だから、子供の頃よく虐められてたんです」
「…え……?」
「この近所にある…"熊猫神社"って知ってますか?」
「うん……行った事はないけど」
その由来などは知らないが、熊猫神社では狛犬や狐ではなくその名の通りパンダの像が祀られているらしい。
その珍しさとパンダの人気から、参拝客も結構多いと聞いた事があるけれど…
「中学の頃…あの神社で悪戯をすると、パンダの祟りがあるって都市伝説みたいなのが流行ってて…。当時俺の事を虐めていたクラスメイトが面白がって俺に悪戯をさせたんです」
「…ひどい……」
「断る勇気が無かった俺は、夜中にこっそり忍び込んでパンダの像に落書きを…」
「……、まさか…」
私の言葉に半田くんがこくりと頷く。
祟りの噂は本当だったというのか…
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