第7章 卒業
(私…いつまでこんな事を続けるんだろう……)
初めはただ遊びのつもりだった。
遊び慣れてなさそうな半田くんを誘惑して彼の反応を楽しんで…
それが今はどうだろう…2人ともすっかりこの歪んだ関係にハマってしまっている。
このまま彼と一線を越えてしまえば、私も彼ももう後戻り出来ないような気がして…
「…ハァ……」
「珍しいね、杏奈が溜め息なんて」
「っ…、彩香……」
いつからそこにいたのか、私のすぐ後ろには彩香が立っていた。
どうやら私の大きな溜め息は彼女にも聞こえていたらしい。
「どうしたの?何か悩み事?」
「別にそういう訳じゃないけど…。彩香こそどうしたの?私に何か用?」
「実は杏奈様にお願いがありまして…」
「………」
こうして彼女が下手に出る時は大抵ろくな事が無い。
きっとまた私に厄介事を押し付けてくるつもりだ。
「杏奈様今夜お暇ですか?」
「…その喋り方やめてくれない?」
そう言えば今日は金曜日。
いつもなら半田くんと過ごす事にしているけれど…
「今日何かあるの?」
「よくぞ聞いてくれました!」
そう言って両手を合わせる彼女。
とりあえず話だけでも聞いてみようと先を促せば、今夜行われる合コンに参加してほしいというお願いだった。
元々男女3人ずつで集まる予定だったらしいのだが、女の子の1人にドタキャンされ人数が合わなくなってしまったとの事だ。
「彩香が私を誘ってくるなんて珍しいね」
「だって杏奈なんて誘ったら、男の子みんな杏奈に持ってかれちゃうじゃない?でも今日は背に腹は変えられないから」
「………」
なんというゲンキンな子だろう…
まぁ私は彩香のそういうところも嫌いじゃないけれど。
(合コンかぁ…)
半田くんと過ごせば、今日もまた彼に妙な期待を抱かせてしまうに違いない。
だったら今日は彼と会うのをやめて、彩香に恩でも売っておこうか。
(そもそも半田くんとは別に約束してる訳じゃないし…)
「分かった…私も参加する」
「えっ…ホント!?」
「うん…でも私の参加費は彩香が持ってね」
「ぐ……ちゃっかりしてる」
「お互い様でしょ」
彼女とそんなやり取りをしていると、ちょうどお昼の時間になった。
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