第6章 誘惑
「うわぁ…モコモコしてて気持ちイイ~」
「……、」
さっきから俺の体を触りまくって喜んでいる織田先輩。
…ただし、今の俺の姿はパンダだが。
今日は月に一度の満月の夜。
予めその事を調べていたらしい先輩は、金曜でもないのに俺を自宅へ誘った。
正直パンダになった姿を見られるのは嫌だったが、彼女と一緒に過ごせるなら…という欲に負け、俺はのこのこと彼女について来たのだ(断る権利も俺には無いのだけれど)。
…そして今に至る。
「お腹もふわふわだし、このまま抱っこして寝たいなぁ…」
そう言って俺の腹の辺りに抱きつき、ぐりぐりと顔を擦り付けてくる彼女。
ああ…今この瞬間人間の姿だったら、どんなに幸せな事だろう…
そんな複雑な心境でいる俺をよそに、彼女は…
「半田くん、もういっその事ずっとパンダでいてくれない?」
なんて酷い事を言ってくる。
(先輩…他人事だと思って……)
当然抗議するようにぶんぶん首を振れば、「ケチ…」と言われ恨めしそうな顔で睨まれた(唇を尖らせている先輩も可愛い…)。
「ところで…パンダのアソコってどうなってるの?」
「…?」
一瞬彼女の言っている事が理解出来なかったが、その視線の先を辿って気付く……"アソコ"の意味に。
「~~!!」
「何言ってるか解らない」
冷たくそう言う彼女に下半身をまさぐられる。
いきなり何をしてるんだこの人は…!
「っ!~~!」
「ちょっと暴れないで!」
こういう関係になってから先輩がすごくエッチな人だと知ったが、まさかパンダのアソコにまで興味を持つとは思わなくて。
いくら彼女にでもこれ以上興味本位であれこれされるのは御免だと思い、俺はすぐ傍に置いてあったお清めの水が入ったペットボトルを手に取った。
「あっ、コラ…!」
そう咎める彼女を振り切りその水を一気に飲み干す。
少しすると、俺は元の人間の姿に戻った。
「俺の体で遊ばないで下さい!」
勢いでそう言えば、すくっと立ち上がった彼女が俺の前で仁王立ちする。
「ふーん……そういう態度取るんだ?」
「…え……」
「半田くん…自分の立場解ってる?」
「……、」
そう言ってぐいっと俺のネクタイを引っ張る彼女。
「…言う事を聞けないペットにはお仕置きが必要だよね?」
「っ…」
.