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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第10章 記憶の固執




-とある日のポートマフィアにて。


『んー、暇だねぇ。』

「仮にも俺等マフィアだぞ?暇で良いのかよ…」

『小さい人は小さい事を気にするんだねー。』

「手前ェも同じ身長だろうが!!」

『女性の平均身長と男性の其れとは違うでしょ?』

「ゔっ……」


中也の執務室のソファで紅茶とクッキーを摘みながら愛理はこの退屈から抜け出す為のきっかけを探す。


『あ!!』

「何だよ、吃驚すンだろ。で、如何した?」


文句を言いながらもご丁寧に質問してくれる所がとても優しいと愛理は思う。
思うだけで口にはしないが。


『誰かに悪戯するって云うのは!?暇潰しには持ってこいじゃない!?』

「暇潰しで悪戯って手前は青鯖かよ。……!!」

『そう。だから恩返ししに行く?』

「あァ、其れも悪くねェな。」


それから私達は太宰に恩返しと云う名の悪戯をする為会議を行った。
ただでさえ頭の切れる人だ、此処はきちんと考えないと目論見がバレてしまう。
一時間程話し合った結果、


「一寸グダグダな気もするが俺達の結婚報告って事で良いか?」

『うん、此れなら大丈夫じゃないかな?万が一バレても無視は出来ないでしょ!』

「あァー、頭使ったら腹減ったな。飯行くか!」

『良いね!そろそろ定時だし帰ろー。』


私達は帰宅の準備を終えると行きつけのレストランバーに来た。
此処は料理も美味しいしお酒の種類も豊富だと中也が連れて来てくれたのをきっかけにすっかり常連客となっている。


『んー、矢っ張り此処のオムライスは絶品!!』

「ンっとに手前は美味そうに食うな。」

『だって本当に美味しいんだもん!一口食べる?』

「其処迄云うなら貰う。」


匙に乗れるだけ乗せると待っている中也に向けあーんをする。
少し恥ずかしそうにしながらも口を開けると美味いな!と眼を見開いた。


『中也のジェノベーゼパスタも食べたい!』

「分かった分かった。ほら、口開けろ。」

『んっ、美味しい!此処に来ると自分の料理の凡脳さに気付かされるよ。』

「はァ?充分上手だろ。」

『いや、中也には及ばないよ。』

「俺は手前の方が上手いと思うがな。」



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