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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第24章 不安定要素






————こうして私はその翌日から独歩の家で居候しているという訳だ。
勿論この事は口外していない。
森さんが警察や学校に根回しすることも考えてはいたのだが、姐さんを通じて連絡をしてくるだけだ。
姐さんの事を調べ上げコンタクトを取っただけでも問題だとは思うが…。



シャワーの栓を止めタオルで身体に付いた水滴を拭く。



そして此処からはありがちな話。
私は独歩のことを好きになったのである。
この距離は縮まらないのか————。
そんな事を考え自分達の立場について嘆く毎日。



『あ…。下持ってくるの忘れた。』



幸い上に着ているパーカーの丈が長めなのでショーツが見えることはない。
リビングを通り自室へ行こうとするとソファーに座っていた独歩が此方を振り返りギョッとした。



国「きっ……貴様は何という格好をしているんだ!!!」

『んー、何て云うんだろ?絶対領域?とは違うしなぁ…。』

国「そう云うことでは無い!!!全く、何度云えば分かる!!もっと用心をせんか!」



国木田の放った言葉にピクリと反応した愛理はヘラヘラとした笑みをしまう。



『用心?用心っていうのは万一に備えて警戒する事を指すんだよ。』

国「嗚呼そうだ。その警戒が足りんのだと俺は常日頃云っているが?」

『今、私は、誰に、用心すればいいの?』

国「俺しかおらんだろう。」

『何故?独歩は私をそういう目で見てないでしょ。』



……何を私は苛ついているのか。
恋愛対象外だなんて今に分かったことでも無いのに。
これじゃあまるで子供だ。
自ら独歩との差を開いて如何する。



『あははは、売り言葉に買い言葉だよ。そんな深刻に考えないでよ!』



何時もより更に深く刻まれた眉間の皺を突っつくと、その手をバシッと掴まれる。



国「愛理、お前は如何したいんだ。」

『え?いやっ、だから、ただの云い争いで……』

国「逃げる心算か?」







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