第24章 不安定要素
『先生!お久しぶりです。』
昨日指定された店内で待っていると相変わらずキッチリとした背格好の国木田先生が現れ、そのまま前の席へ腰を掛ける。
国「早速ですまないが本題へ入ろう。森さんを通してではなく直接連絡を寄越したと云う事は俺個人に何か頼みでも或るのだろう。」
『流石、国木田先生。実は私、人形なんです。』
国「……は?」
開いた口が塞がらない先生はもれなく頭の先から全身を眺めた。
……騙されやすいところも変わってないようだ。
『あ、勿論代名詞ですけど。』
国「ったく、貴様は……!」
『感情も意思も無いただの人形。私の行動原理は全て森さん。それは先生もお気付きでしたよね?』
国「嗚呼。子供らしくない子供だったな。」
眉間に皺を寄せた国木田先生は小学生の頃、家庭教師として家に雇われた人だ。
とても真面目で勤勉なところを買われたらしい。
其処に偽りはなく分からない点があれば物事問わず何時でも尋ねてよい、と連絡先を教えてくれる程面倒見が良かった。
『矢張りそう思いますか?』
国「小学生が普通家庭教師に“友達の定義”など聞かんだろ。」
『ふふっ。それもそうですね。……初めて私の身を案じてくれる人が現れたんです。このまま人形で居ていいのかって。』
国「佳い縁が或って良かったな。ならば頼み事とは森さんの説得か?」
『彼の人が説得に応じると思いますか?』
国木田先生は目を閉じると間もなく首を横に振った。
『単刀直入に云います。私に融資して貰えませんか?』
国「はっ……!?」
『私は家を出たいと思っています。けれど所詮は中学生の身。来年高校生になりアルバイトを始めても到底一人暮らしなど出来ません。なので私の将来を担保に融資してくれる方を探していたんです。』
国「都合の良い様に扱われるかも知れんぞ!?もっと自分を大切にせんか!!」
思わず立ち上がり大声を出してしまった国木田は周囲の視線を集めていることに気付く。
失礼、と謝罪を入れ彼女の馬鹿げた提案についてもう一度考える。