第1章 招かれざる客
「一目見た時に一寸良いなって思ってな、そンで色々話してるうちに惹かれたって訳だ。」
『じゃあお互い一目惚れだったんだ。』
「あァ、そう………って愛理!?」
唐突に現れた愛理に驚き中也は思わず仰け反りソファーから落ちそうになる。
『私もあの時一目惚れしたの。橙色の髪が月夜に照らされてとても綺麗で。戦う姿も無駄がなくて鮮やかで。あとお洒落だし。』
「愛理ちゃん、中也がお洒落だなんてその頃の君は如何かしていたのかい?あ!田舎から出てきたばかりでアレをお洒落だと勘違いしてしまったとか!?」
「……今すぐ死なしてやる。」
愛理はふふっと笑うとご飯が出来ましたよ、と配膳を始めた。
それを見た中也はワインとウイスキー、オレンジジュースを出す。
帰宅してからずっと不機嫌だった彼がワインが飲める事が嬉しいのか、はたまた愛理のご飯を食べられる事が嬉しいのか鼻歌迄歌い出す。
『よしっ!これで終わり!じゃあいただきます。』
「「「いただきます!」」」
「んーっ、このロールキャベツ絶品です!!柔らかくて舌が蕩けそう…」
「愛理ちゃんは料理上手だねぇ!これなら直ぐに私の元へ来てくれても問題無いよ。いや、是非明日から来てくれ給え!」
「何云ってやがンだ。間違っても手前なンかの所には絶対行かせねェ。愛理、何処にも行くなよ。」
各々が思い思いに口を開く中、急に聞こえた愛する人の口説き文句にフォークを落としそうになる。
まだ酔うほど飲んでいないはずだが大方太宰さんの挑発に煽られているのだろう。
そう云えばこの前太宰さんの話をしたときにも似たようなことを云われた気がする。
盗られるとでも思っているのだろうか。
『私の帰るところは此処しか無いでしょう?』
「…嗚呼、そうだな。」
その日は結局夜が明けるまで飲み、太宰は敦に引きずられるようにして帰っていった。
次の日、二日酔いを理由に仕事をサボったのは云う迄も無い。
「太宰さん、何時もよりペース早かったなぁ。よっぽど愛理さんのこと…。僕も早く諦めなきゃ。」
「やっぱり敦君もか。あんな見せつけられちゃったらね〜。まぁ私は諦めないけど。」
「だっ、太宰さん!?急に現れないで下さい!!」
END