第3章 鳴上 嵐 / 優しいケダモノ ★
ある日のお昼休み。
ガーデンテラスにて食事をしようとしていた鳴上 嵐は、一人トレイに昼食のセットメニューを乗せて歩くクラスメイトを発見した。
「あらぁ? 聖子ちゃ~ん、お昼を食べるならご一緒しない??」
話し掛けても返事はない。
その様子から、彼女が何か考え事をしているようだと容易に推測出来た。
彼女は考え事をすると周りが見えなくなることが今までに何回かあったからである。
「んもう、聖子ちゃん! 考え事しながら歩くのは危ないわよ? ちょっと…ちょ、聖子ちゃんストップ!! 止まって危ないから!! 聖子ちゃん!!!」
「…っえ…? きゃっ…!?」
彼女の手にしていたトレイから、お皿が空を舞った
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「うぅぅ…ごめんね、嵐ちゃん…」
「もう、何回謝ってるの?(笑) 大丈夫よ、それに聖子ちゃんも無事だったんだし良かったわ♪」
陸上部の部室にあるシャワー室。
その中の、シャワーブースの薄いカーテン越しに話していた。
あの時、考え事をしていて階段に気が付かなかった。
1段踏み外し、落ちる------って思った瞬間
嵐ちゃんが抱き留めてくれた。
きっと、嵐ちゃんが来てくれなかったら、そのまま落ちて大怪我をしていたと思う。
それで終われば少女漫画のようで素敵だったのだが、
現実は残酷だった。
持ってた昼食達が…お皿が宙を舞って…
嵐ちゃんの上に降って来たのだ。
嵐ちゃんの綺麗な髪が、綺麗なお顔が、大変なことになってしまっていた。
故に、嵐ちゃんは今シャワーを浴びているのです。
「…ふぅ、生き返ったわ~☆」
今まで大きな音を立てていたシャワーの水音が、
キュッと大きな音を立てて断ち切られた。
「嵐ちゃん、はい、タオル使って? あと、タオルの中にユニット衣装いれておいたから…」
「あら、流石ね♪ ありがとう♪」
カーテンの隙間に手だけ入れてタオルを渡す。
嵐ちゃんとは女友達みたいだけど、流石に、そこは男と女な訳で…
鼻歌まじりに着替えを済ますのをゆっくり待っていた。