第7章 哀しみと踏み出し
「ただいまー。」
誰もいない家に呼びかける。
(はぁ、萩原さんと付き合ってる、か。)
考えたくもない。でも仲よさげだったし、可愛かったし。
「で、でも、あの子貧乳だったし!」
(いや、でも和泉君はそっちの方が好きってこともありうる、、。)
すぐに脱線してしまい、考えはまとまらない。
「うー、もうやだ。」
はぁ、と息をつく。
ピンポーン♪
(なんか来た)
「あ、はーい!」
圭祐かも、という若干の期待を乗せて出てみると、そこには郵便局の人が立っていた。
「あ、どうも。」
「お届け物です。」
荷物を受け取り、はんこをおす。
家に帰ってきて荷物を見てみた。
小さな箱。一般的な辞書より一回りくらい大きいくらいな。
(差出人は、、、、っ)
差出人の欄にはたしかに、「和泉圭祐」と書かれている。
(和泉君っ)
急いで箱を開けてみると、中には可愛らしい髪飾りと、雑貨店などでよく売っている、「ありがとう」というカードが入っていた。
(なんで、、、?)
なぜ別れを告げられたのか、なぜこれが送られてきたのか。全く意味がわからない。
(ようやく、ちょっと立ち直ってきたのに、、、。)
混乱と、哀しみと、嬉しさと、切なさと、色々な感情が入り混じって自分でもよくわからない。
(あれ?)
メッセージカードの裏に何か書いてあることに気がついた。
《お元気で。大好きです。》
「おげんきで、だいすきです。」
口に出してみても、その本意がよくわからない。
でも、メッセージカードのその何文字かだけでも、圭祐が光里の事を好きでいてくれたのがすごく伝わってくる。
「好き」が光里の「好き」と同じかはわからないけれど。
髪飾りをつけてみた。
髪飾りは光里がするには大人っぽくて、綺麗すぎるような気がした。
「、あはは」
髪飾りが自分には不釣り合いに思えて、思わず笑ってしまった。
乾いた笑いは1人きりの部屋に虚しく響いた。