第4章 誕生日
(違う。こんなにも頼りになるから、優しいから、
こんなに好きだから泣きそうなんだ。)
”そんなことない“って、”待って“って言いたいのに口を開いたら泣いてしまいそうだった。
(でも、それでも、行かせない。)
光里は立ち上がった圭祐の腕を必死に掴んで見上げた。
「え、?」
「待ってよ。そんなことない。和泉君は、いつでも優しくて、
頼りになって、 離れたくなくて、いつも私、助けられててっ」
言いたい言葉はもっとあったのに途中で涙声に変わってしまい上手く言えない。
光里はそこで泣き出してしまった。
(絶対やなやつだと思われてる。)
涙は止まらなくて、でも言いたいことはたくさんあって。
「もう、的羽さんの馬鹿。
なんで、泣き出すまで我慢しちゃうんですか。」
掴んでいた腕を解いて光里の手を優しく握った。
「ごめんなさい。僕どこにもいきませんから。
此処にいますよ。」
安心したらまた涙が止まらなくなった。
「ごめん、私、いつもっ、」
圭祐はもう片方の手で光里の頭を幼児をあやすように撫でていた。
「こうなったからには絶対悩み聞きますから。
聞くまで帰りませんから。」
(あーあ、悩みって和泉君の事じゃん。
バレちゃうな。)
でも、今はそんな事どうでも良かった。
握られた左手の温もりを、ただただ離したくなくてギュッとにぎっていた。