第2章 皆が悩むWhiteDay
〈 時環 花臣 side episode 〉
『...........?』
言葉はよく聞こえなかったが、
羊の叫ぶ声が聞こえてきて
花臣はぱっと顔をあげる。
『......まぁ、どうせ上手くできなくて
僕に助けを求めてるってとこでしょ。
だからクッキーなんて
ひーちゃんには無理だって言ったのに......』
花臣は、羊を少し不憫に思いながらも、
めるの自分への好感度を高めるに絶好のこの機会を逃すわけにはいかず、
その声を無視して見ていた本に視線を戻す。
『.........めるちゃんはやっぱり、
煌びやかなものより庶民的なものの方が
好きだと思うし......
この、素材の味を生かした...
あ、いやでも、それは料理の話で
お菓子だとどうなんだろ......
せっかくのホワイトデーだし、ちょっとくらい豪華なやつの方が喜ぶのかな......
うーん、それだと...…あ、綺麗で見た目にもいい、こっちのチョコレートの彫刻をあしらったケーキも......いや、いやいやでも女の子だし、
やっぱり可愛いものに弱いかな......
この熊さんとか可愛いけど.........
あーでも、こっちの雪うさぎさんを模したシフォンも...
て、ああああ!やっぱり時間が惜しい!!
悩んでる時間も勿体ない...!
.........もう、いっその事全部作る...?』
とにかく時間がないと
花臣は急いでお菓子づくりに取り掛かった。