第6章 I am so cold
「爆豪さん見てんの?」
『あ……』
くるみは気まずそうな顔をエミリに向けると
ヘラっと笑って頷いた
『ここからなら…見ててもバレないかなぁって…』
「別に見るくらいコソコソしなくても…」
『ん…でも、迷惑になりたくないの…
ね、それよりさ、爆豪くんすごいよね
予選3位通過…かっこいいなぁ』
独り言に近いつぶやきに、エミリとレイナは目を合わせため息を吐く
友人が健気すぎて何も言えない2人の目下に
先程から誰かを探すように観客席を見回している轟が見え、エミリは身を少し乗り出した。
「ね、エンデヴァーの息子さん、くるみのこと探してんじゃない?」
『え?いや…違うよ
多分エンデヴァー探してるんだよ』
「いや、エンデヴァーならそこ、すぐ見つかるし…燃えてるしデカいもん!
はー…やっぱ強そー!かっこいいー」
エミリの指先には確かに、席にも座らず仁王立ちで轟を睨み下ろす巨体の姿…。
エミリは、自己紹介でもエンデヴァーのファンだと言っていただけあって、先程から何度もスマホのシャッターを切っている。盗撮なのだがいいのだろうか。
『ほんとだ…目立つね』
「でしょ?やっぱくるみ探してるって!おーい!轟くーん!」
エミリは両手をブンブン振って轟に合図を送ったのだが、くるみに抑え込まれた。
『やっ!何してるの!爆豪くんにバレちゃうじゃん!覗き見出来なくなっちゃう!』
「でももう遅いみたいだよー?
轟くん、こっち見てるし」
レイナが指を指す方向に、そろそろと視線を向けると
確かにバッチリと轟とくるみの視線が合った。
小さく手を振ってくる轟にくるみも笑って手を振る。
そんなやりとりを爆豪は舌打ちしながら盗み見るように睨みつけていた