第32章 I am making my mind
徐々に落ちて行く夕日の中
仰いだ空
熟れて弾けた柘榴(ザクロ)のようなその色は
今日を死にゆく太陽の断末魔のようだった。
────関西地方、江洲羽市。
前回よりも広げられた規制線のせいで、周囲は円周5キロに渡り静まり返っていた。
工業地帯の一角に存在する、有刺鉄線つきのくすんだ塀にぐるりと囲まれた敷地は荒れ果てて
草の生えた空き地の先にあるのは、錆び付いたトタン屋根の廃工場。
三階建てのそれは、ヴィラン連合幹部である、
死柄木と縫井くるみの潜伏先
と、同時に爆豪が囚われているとされる場所でもある。
裏手には、無数の黒い頭が犇(ひし)めいている
ヘルメットにゴツい防弾チョッキ、盾の重装備で固めた警察機動隊
彼らの先頭にズラリと肩を並べているのはプロヒーロー達だ。
────二度目の爆豪救出作戦。
今はその突入前
刻一刻と迫る日没に、言い知れぬ不安が膨らんで
そこだけ、空気がピンと張り詰めている……
そして、何故か
プロヒーロー、機動隊から少し距離をあけた軒下に、緑谷と轟の姿があった。
資格も持ち合わせていないはずの二人が、
ヒーローコスチュームに身を包みこの場に居合わせている理由、それは
数日前に遡る……