第30章 I am talking about our past 2
『廃工場……?』
「わわ、イカニモってかんじ!」
トガの大きな声が室内に響く。
黒霧がゲートを閉じたと同時に、コンプレスが思い出したようにくるみに向かって一つのビー玉を差し出した。
「クィーン、こちらをどうぞ」
『なにこれ?』
パチン!と指のなる音が、大きく響いて
くるみの手の中に布地が現れた。
『わ……弔くん……
もしかしてこれって!!』
くるみは潤んだ瞳を死柄木に向ける。
「先生からだ」
小躍りしそうな様子で、くるみが台の上に広げたのは、黒いワンピースだった。
よほど嬉しいのか、その場でブラウスを脱ぎ始めるくるみに
トゥワイスと、コンプレス、荼毘と黒霧は目を見開く。
「……おい、見るな男共……」
が、その四人は死柄木に睨みつけられ、その視線を他所に逸らした。
「わ、私には言われた感じじゃなかったけど…
もしかして、女って認めてくれたのかしら?!」
両頬を抑えて、まぁ!と内股になるマグネに、死柄木はうんざりした顔を向ける。
「オカマ、お前も居たのか。気づかなかった」
「キーーー!」
そんな会話の中、着替え終わったくるみは、その姿をお披露目しようとクルリと回った。
『弔くん!弔くん!』
真っ黒い膝下丈の切り替えのないワンピースに、
首をしめるように後から回された手首が2つ。
足元には、靴下に赤い靴…。
その姿は、まるで…
「死柄木の女版かよ…」
荼毘が小さく呟いた言葉に、全員頷いた。
『これで、やっとヴィランだ…!』
喜ぶ彼女の頬に、死柄木はそっと四指を添える。
『どうかな、弔くん……////』
死柄木は何も言わなかった。
ただ、愛しげにくるみの頬を撫でるだけで、くるみは満たされたように死柄木の胸に抱きついたのだった