第4章 I am hot
オールマイト、その名前を呼ぶ時、轟はいつも極めて荒んだ目付きをする。
『オールマイト…苦手…なの?』
個人的な因縁を抱えたような言い方を疑問に思ったのか、くるみは言葉を濁しながら轟に聞いた。
轟は、小さくしてしまったコーヒー缶をゴミ箱に捨てて、ため息を吐くと…白状するように話し始めた。
「俺の父親は、万年No.2のヒーロー
エンデヴァーなんだ…」
『え…!』
くるみは目を丸くして轟を見つめる。
『似て…ないね』
「俺はお母さん似だ」
『そうなんだ…』
「…あいつは、極めて上昇志向が強い奴で…破竹の勢いで名を馳せたが
それだけに、生ける伝説オールマイトが目障りで仕方なかったらしい…
自分ではオールマイトを超えれねぇ親父は、次の策に出た」
『次の…?』
「個性婚…知ってるよな
個性で配偶者を決める…一時期問題になったやつだ」
『うん…』とくるみが頷くと、轟はまた前を向いて話を続ける。
「倫理観も愛もねぇ結婚だ…
アルファの親父は、自分の子供もアルファにするために金と権力にモノを言わせて、アルファでしかも個性の相性がいい母を手に入れた
ただ、オールマイトを超える道具を産ませるためだけに」
『………』
「お母さんは次第に病んでいった…
覚えてる限り…泣いた顔しか見たことがねぇ…
いつだったか…『おまえの左側が醜い』と、俺に煮え湯を浴びせた」
左目を覆う大きな赤黒い痣……
『その…アザ?』
「あぁ…」
くるみはなんとも形容しがたい表情をしたが、すぐに俯いて『そうなんだ…』と呟いた。
「あいつが特別気になんのは、そう言う理由だ
親父の個性なんざなくても、オールマイトの個性を超すことで
クソ親父を全否定する」