第25章 I am your love
クマのキーホルダーが、揺れる。
黒地にオレンジ色のバツマーク。
瞳は真っ赤な爆豪仕様のぬいぐるみは、くるみが爆豪に贈った最初のプレゼントだった。
「行ってくる」
『行ってらっしゃい』
まだ日が昇りきらない時間
薄暗い玄関先で交わされたキスは、唇の先を触れ合うような生半可なものではなく
引き寄せられた後頭部、深く絡む舌
これから会えなくなる一週間分のキスを貯蓄するような熱いもの
『これ…離さないでね』
指先で触れるクマのぬいぐるみに、爆豪は首を縦に振った。
「わかってる」
『結局、行先はわかんないままなの?』
「あぁ、万全をきすためだとかで、知らされてねぇ」
『そっか…寂しいな…』
USJのヴィラン来襲以後、雄英は生徒にさえも何も知らせないで林間合宿の準備を進めてきた。
全ては、生徒の安全を守るため
内通者の存在を恐れての対策だというが、くるみは不安げに爆豪の服の裾を掴む。
『どこにいるか…わからなかったら、何かあっても助けに行けない…』
「何か起きねぇ為に、どこにいるか分かんねぇんだろ」
爆豪は薄く微笑むと、くるみの頭を撫でた。
「安心しろ、お前に守られるほど俺は弱かねぇ」
もう一度落とされるかと、近寄せられた唇にくるみは目を閉じる
だが、爆豪は唇を通り過ぎて、そのむき出しになった首筋に強く歯を立てた
「首輪、ちゃんとつけとけよ?」
『家から出ないよ?』
「それでも、俺と居ない時は付けとけ」
くるみがゆっくり頷くと、爆豪はくるみから手を離し玄関を出た。
重い鉄のドアが閉まる音を聞き終えたくるみは
一人になった部屋の中で、静かに首輪を首に巻きつける
カチッと音を立てた首輪の鍵が
狭い部屋に響いた。