第21章 I am coward
「えっと…爆豪とくるみちゃんって…やっぱ付き合ってんだよな?」
緑谷に声をかけたのは上鳴。
その横の轟の表情があからさまに曇るのを見て、
「あ…わりぃ」と口を閉じた。
「いや、いい…気にすんな」
「くるみちゃんのことで手を出したって…」
麗日が問うと、緑谷は眉を下げて気まずそうに呟いた。
「うん…ちょっと、僕が暴走して…
轟くんと縫井さんをくっつけようと…
でも、すぐかっちゃんにバレて、余計に拗らせてしまったというか…」
言葉尻が小さくなっていく緑谷にクラスメイトは同情の目を向けた。
「でもさ、実際オメガ相手に付き合ってて
番になってない爆豪はどうかと思ってるよ、オレ」
そういったのは瀬呂。
「俺の従姉妹の姉ちゃんオメガで、ヒートがやばいって聞いたからさ」
「まー、確かに…
違和感はあるわな」
「爆豪、アルファとしか結婚しねぇって言ってたし…
くるみちゃんのこと、もしかして遊び?」
「え…なにそれ、ひど…」
爆豪がアルファだということを前提に、爆豪の非道を責める女子たちの悲鳴。
誰も爆豪を庇うものなどこの場には居ないかと思われたが、
唯一、切島が机をバン!と叩く。
「べつに、バクゴーとくるみちゃんがそれで納得したんだから良いだろ!
俺らが口挟んで良いことじゃねぇ。
それに、あいつ…その、轟とくるみちゃんが一緒にいるの見た時…マジに焦ってたんだぜ?
あんな爆豪見たの初めてだったし…
あれ見た時、本気でくるみちゃんのこと好きなんだなって、俺思ったよ」
「……ごめん、確かに俺らが口出すのもおかしいよな…」
反省するクラスメイトの中、緑谷と轟だけは、未だ納得のいかない顔をして、目を合わせて居た。