第20章 I am not so bad
『…っ』
くるみは押し黙って、ハラハラと涙を流し続けた。
小さな体はいつもより弱々しく見えて、
思わず抱きしめたい衝動に駆られた…
くるみに言った言葉は全て嘘だ
でも嘘でもつかねぇと、コイツが辛くなるだけだ…
俺も…辛くなるだけだろ
さっき、轟と居るのを見たとき、はらわたが煮えくり返るような怒りに襲われた。
くるみが俺のことを裏切ったんじゃねぇか…
そう思うと苦しくて、心がどんどん弱くなってった。
こんな気持ちに、ふりまわされ続けんのかと思うと、怖いと思った…。
くるみとアルファが話してるだけで、自分に劣等感を感じる…。
嫉妬に狂って、冷静じゃいられなくなる。
弱くて
情けなくて
かっこ悪りぃ
そんなのは俺じゃねぇ、そう思うと
くるみを突き放す他、方法が思い浮かばなかった。
のに、
背中にトン…と小さな衝撃と、柔らかさ
くるみの震える腕が俺の腰に巻きついて、涙が背中をじんわり濡らしていく
「離れろ…」
『やだ…!』
「アルファと番え、それが一番幸せだろうが
番になりてぇって言ってる奴が居んだ…そいつんとこ行け」
『無理…もう、番にはなれないもん…』
腕が離れ、後ろでカチャカチャと音がする。
ゴトン!と重いものが床に落ち、俺は思わず振り返った
『爆豪くんが…番ってくれたから…
もう、他の人とは番えない…』
くるみが長い髪をかきあげる。
涙の伝う首筋には、昨日つけたばかりの噛み跡。
薄くなって居るそれに指を這わせて、くるみはまた涙を流した。
『爆豪くん……コレも、嘘なの?』