第17章 I am not your destiny
フラフラと戻ってきた部屋のドアの前で、くるみになんと言えばいいか…そう考えると一歩も踏み出せなかった。
だからと言ってこのまま逃げることもできない。
鍵を開けると、むせ返るようなオメガの香り…。
抑制剤…効くはずもねぇよな。
アルファ用の抑制剤をベータが飲んだところで意味はねぇ…。
自傷気味に笑い、静かに奥に進むと、俺の服で作った巣の中でスヤスヤと眠るくるみの姿。
アルファの匂いでも無いのに…巣の意味なんかあんのか?と問いたくなるが
額に手を当てると、熱はやっぱり高ぇ。
汗でぐっしょり濡れたシャツ…。
起きたら着替えさせねぇと…と思っていると、苦しげに唸り始めた。
「大丈夫か?」
『ぅ…くっ…あつ…い…
あぁっん…ハァ…ばくご…くん…』
「ちゃんと居る…安心しろ」
抱きしめると、少し落ち着いて胸元に擦り寄ってくる。
ベータでも、アルファ程ではなくともオメガのフェロモンには反応する。
簡単に立ち上がる自身に、「こんな時くれぇ、自重しろや」と言いたくなったが、仕方ない。
トロンと開いた瞳が、嬉しそうに細くなって、桜色の唇が、
『爆豪くん…♡』
と甘く呟いた。