第16章 I am who you loved
鍵を開けるまえから、部屋から漏れ出すオメガの香り…
渡された鍵で部屋に入ると、体の底から湧き溢れる欲情に、クラクラと目眩がした。
(抑制剤飲んでてもこれかよ…)
壁をつたいながら、奥へ進むと、生臭い匂いに…カーペットにいくつもの血痕…。
それらが、この場で犯されたことを物語ってくる。
散乱した服が鳥の巣の様にくるみの周りを包んで居て
その中で縮こまって眠るくるみの手には男物の真っ赤な雄英ネクタイが握られている。
(コレが…【巣】か)
聞いたことはあっても見るのは初めてだ。
なるほどな、これ作るために服がいるんか…
眠るくるみの横顔は、時折呼吸で動くのを無くしてしまえば、ただのでけぇ人形だと言われても納得しちまいそうな程だった。
『ばくご…くん…?』
見とれていたのか、くるみがうっすらと開けた目でこちらを見つめながら呟いた。