第14章 I am lonely
「マジで直んねぇ…どうなってんだよ」
一週間寝かされ続けた髪は8対2のまま固定され、どれだけ洗ってもその癖が取れない。
このままでは遅刻してしまう、というギリギリの時間まで鏡の前で戦ったが、敵うことなく学校へ向かう。
はっきり言って、職業訓練の行き先は選択ミスだった。
マナー講座や言葉遣いの修正…唯一のヒーロー活動といえば、愛想を振りまくためのパトロール…。
「クソが……」
思い出すだけで腹がたつ…
「ねぇ、見た?あの動画」
「見た見た…怖かったよね」
電車に揺られていると、斜め前の女どもが携帯を覗きあって何やら話している。
(あれか……)
思い出すのはYouTube1位の動画
何度も消しては上げられ、消しては上げられを繰り返す問題の動画は、ヒーロー殺しステインの経歴と思想を説明する1分未満のもの。
もちろん爆豪もその動画に目を通したが、思想なんだのと言えど犯罪者には変わりない。
(あの事件…舐めプ野郎とメガネとデクのやつが関わっとったって話だが……まさか、戦闘したとかねぇよな…
俺があんなクソみてぇな時間過ごしてる間にンな経験積んどったらコロス)
万が一の事態に舌打ちをすると、
『ばく…ごーくん?』と小さな声が、後ろの方からした。
思わず振り返れば、満員電車の人混みからモゾモゾ小さな体が出てきて、顔を上げた。
『やっぱり!爆豪くんだ!
けど……その髪型…イメチェン…?』
くるみは嬉しそうな顔をした後に、少し苦笑いになって頭元を見上げてくる。
「ち!!!げぇわ!」
『なら、寝癖?
でも、似合ってるね』
「似合ってねぇわ!バカにしとんか」
ちょうど駅に着いたところで、爆豪は先に降りたくるみを追うように唸る。