第13章 I am a egg
『あ、これ…お見舞いです』
誰に渡そうかと、突き出した果物カゴは右往左往する。
「ありがとう、心配かけてごめんね」
1番近くにいた緑谷が受け取ると、くるみはへにゃっと笑った。
緑谷と轟のベッドの間に差し出されたパイプ椅子に腰掛ける。
『でも、本当に3人とも無事でよかった…
保須のニュース、凄かったんだもん…。』
安心しているというか、いつもよりどこか暗い面持ちのくるみ。
「僕たちは、ニュースを見てないからなんとも言えないが
どんな報道がされているんだい?」
両手が包帯に巻かれているため、いつものビシッのポーズができない飯田が聞くと、くるみはますます顔を暗くした。
『うん……まぁ、8割型、いや9割型はヒーロー殺しの逮捕の話だよ…。
あとは、その…脳無が逮捕されたから、ヴィラン連合との繋がりがあるのかもって程度で…』
「そうか、ただヒーロー殺しはヴィラン連合ではないと思う。
あくまで見解だが、彼が脳無を殺したのをこの目で見た」
『そうなんだ』
そこに、看護婦が、飯田を診察のために呼びに来て
合わせるように、緑谷の携帯が鳴り、「あ、麗日さんだ…ちょっと話してくる」と部屋の外に出ていくと、
轟とくるみの二人が病室に残された。
「ありがとな」
『ん?』
「心配して、東京まで来てくれて
今日だって学校だろ?
すまねぇな」
『あー…うん、そだね
でも、本当…こっちが勝手に来ちゃっただけだから
気にしないで?』
朝の光に透けるようなまつ毛が、ほほに影を落とした。
咄嗟に触りたくなるような衝動に駆られたのは、彼女がいつも異常にどこか艶っぽく感じたせいだ
(そういえば…前回のヒートはちょうど3週間前…)
来週にはまたくるみはヒートに苦しむのだろう。
直前ということもあってか、ほのかに強くなった香りに理性を握りしめる
少しして、くるみはパイプ椅子から立ち上がった。
『そろそろ帰ろっかな』
「もう帰んのか?」
『うん、新幹線の時間もあるし』
「…そうか」
ヒラヒラと手を振って部屋をあとにしてしまうくるみを引き止めることもできず。
ため息を吐いた