第12章 I am an Alpha
片思いを受け入れてしまえば、なんとも清々しくて
ほんの少しだけ自分のことを好きになれた。
くるみと別れて、帰宅する
ガラガラと煩い玄関を開けると、待ち構えるように仁王立ちの男が俺を迎えた。
「遅かったな」
せっかくの良い気分をぶち壊しにくる声に、思わず顔を顰める。
返事もせずに、靴を脱ぎ、横を通り抜けようとすると、親父の体を纏う炎が揺れた。
「…またあのオメガと居たのか」
「!」
思わず、親父を睨みつけてしまって後悔した。
こんな反応では、一緒に居たと答えてしまっているようなもので…
「まったく…情けない!
オメガの匂いを移して帰ってきおって…!
そんなに女が欲しいなら、アルファを見繕ってきてやると何度も…」
「それ以上言うな………」
静かになった廊下を進む。
手が震えて、喉に何かが競りあがってくるような感覚…
怒りに身を任せて、氷を出しそうになった、霜の下りた右腕を抑えた。
部屋の襖を開け、やっと息を吐けば
さっき親父が言っていた言葉の一節を思い出した。
ーーー「オメガの匂いを移して帰ってきおって」
オメガの匂い…雄のアルファが気付くのは雌のオメガフェロモンだけだ。
という事は、俺の周りにいるオメガといえば、緑谷とくるみだけ…。
「俺の体に…くるみの…匂いが?」
制服の袖に鼻を押し当てて匂いを吸い込んでみるけれど、
姉さんの好きな柔軟剤の匂いしかしない。
「何してるんだ…俺は」
叶わねぇ恋だなんて
誰よりも分かってる……
だからって簡単に
捨てられる気持ちじゃねぇ…
(面倒くせぇな…)
ほんとうに
「面倒くせぇ…」