第12章 I am an Alpha
「…ろきくん」
「とどろきくん!」
「轟くん!!!」
肩を揺すられて、現実に引き戻された。
こちらを心配そうに見つめる、四人と目を合わせると
やっと肺に空気が流れこんできた。
「わ、悪りぃ…ちょっと、体調が悪りぃみてぇだ…」
「そう…みたいだね
帰ろ?送るよ」
「いや、大丈夫だ…
心配かけた、すまねえ」
轟くんは、そう言って僕に作った笑みを向けると
フラフラと駅の方向に向かって歩いていく
「なー、轟大丈夫か?」
「あ…うん……どうだろ…」
さっき…一瞬だけ、轟くんの表情が歪んだ…
その顔を思い出して、僕は少しだけブルっと体を震わせる。
轟くんの、前髪に隠れた瞳が、ギラギラと鈍い光に歪んで…
少し唇から覗いた犬歯が、刃物みたいに尖っていた。
よもや、轟くんまでもが縫井さんを好きだとは露ほどにも知らない三人は、未だかっちゃんと縫井さんを覗き見ている。
「あーあ、いいなぁ青春」
呟いたのは峰田くん。
「だよなー
爆豪も、まんざらでもなさそうだし?」
上鳴くんの言葉に、僕は改めて2人を覗き見た。
確かに、あんなかっちゃん見たことないし、恋愛に疎い僕でも、かっちゃんは縫井さんに好意があるように見えてならない。
だとしたら、
それは、縫井さんにとってはいい事で…
でも、轟くんにとっては悪い事で…
轟くんの苦しみも、わかるけれど…
ヒートの時の、縫井さんを目の当たりにした僕は、やっぱりどうしても
かっちゃんのコトをただひたすらに好きな縫井さんを
応援してあげたいと……
思ってしまっていたんだ。