第11章 I am a liar
「俺は…あいつが幸せなら、それでいい
たとえ、俺とつがわなくても」
【嘘つき】
男はまた、歯を出して笑うと
俺の首元に腕を回して、しなだれかかってきた
「嘘じゃねぇ」
【本当は、今すぐ噛みたいクセに】
「違う」
【違わないね
真っ白なうなじに噛みつきたいクセに
最近じゃ、一緒にいるだけで歯が鋭くなってる】
「煩せぇ…」
【全部欲しいクセに
噛み付いて、永遠に自分だけ見て欲しいクセに】
「うる…せぇ……」
【「応援する」なんて綺麗事
よく言えたもんだよなぁ。
本当はそんな事、微塵も思ってない
爆豪にフラれてボロボロになったらって…そう思ってるクセに】
耳元で脳を揺さぶる自分によく似た声の喉元を掴んで握る。
「煩せぇ…
違げぇ……俺は、そんな事思ってねぇ……
消えろ……」
【ーーー消えろ…?
ハハっ……何言ってんだ?】
首を絞められていると言うのに、男は笑う。
何がそんなにおかしいのか、
でも何かが面白くて面白くて堪らないと言った様子だ。
エメラルドグリーンの瞳が闇に濁ってこちらを向く。
【俺は元から居ないよ
ーーーー俺は、お前だ
責任転嫁も甚だしいな】
瞬間
男は消えて、そこには俺しか居なかった。
「な……」
右も左も、
後ろも前も
どこを見ても、そこには俺しか居ない。
俺が
俺の
俺で
俺は……?
【噛みたいクセに】