第11章 I am a liar
『っでね!爆豪くんがね…!』
そう言って俺の目の前で笑うくるみに、また喉が締め付けられるような錯覚を覚えた。
昨日の帰り、約束していなかったことを後悔する。
いや、約束をしていたとして、くるみは俺に連絡を入れ、爆豪と共に帰っただろう。
『爆豪くんが一緒に帰ろうって言ってくれた!』と言われてしまえば、俺が止めれる理由もねぇ。
昨日の出来事を事細かく説明してくれること、すでに30分。
くるみと一緒にいてこれほど時間を長く感じることはない…
ただ時折相槌を求めてくる視線に、
「良かったな」
そう答えるだけが、今の俺の存在意義だ。
『そういえばね!
前、1番最初にポイントもらったモテ術!使ってみたの!』
「あぁ…」
アレか、と記憶を辿る。
«モテ仕草32番、帰り際にちょっと引き止めてみる»
「どうだった?」
と聞けば、それはそれは照れ臭そうに笑って
『わかんない…でも、また一緒に帰ってくれるって言ってくれたの』
「…そうか、ヨカッタナ」
何も良くない、ただくるみを安心させるためだけの嘘を吐く。
ひとしきり話したくるみは一口ジュースを飲んで
窓の外を見つめた。
昨日の夢のような出来事を思い返しているのだろうか。
ぽやっとした視線は空に浮かぶ雲を辿っているように夢見心地で
俺が目の前に居ようと、頭の中は爆豪のこと一色なのだろう。
「俺はここにいるのにな……」
唇だけ、そう動かした。
俺は、ここにいる
くるみのそばに、くるみが望む時いつでも居る…
なのに、お前はいつも、ここにはいないアイツの事ばかり。
当たり前だよな
くるみが好きなのは爆豪なんだから
俺は、それを応援するって言っちまったんだから…
傷付いたって…
誰も責めれねぇ…