第10章 I am running
「帰んぞ」
そう言われてくるみは浜に上がり、爆豪に付いて家の近くまで歩いた。
何の会話もなく、隣を歩くでもなく…
帰宅した頃にはもうとっくに日は沈んでいて
爆豪の家の前を抜け、くるみの家の前で二人はやっと距離を縮めた。
『送ってくれてありがとう!優しいね、爆豪くん』
「近所だろうが、大袈裟なんだよ」
『それでも嬉しいの、勝手に喜ぶだけだから』
ふわりと微笑む彼女は夕暮れに滲む。
「……」
何も言わずに振り返ると、くるみはそっと爆豪の袖口を摘んだ。
爆豪はその小さな刺激に、くるみの方を振り向き、目を合わせる
「…んだよ」
『あっ…いや……ごめん…』
手を離すと真っ赤になって俯くくるみに、爆豪はめんどくさそうに溜息を吐く
「ンな顔すんな」
『ぅ……ごめん…』
くるみは両手で頬を摘んで、しぼんでいくように俯いた。
「別に方向同じだろうが
また、嫌でも帰り出くわすだろ…」
少し含みのある言葉に、くるみはパァっと顔を明るくする。
『そ、そうだよね!』
爆豪はピン!っとデコピンをしてもう一度「うっせぇ」と言って
家のある方へ歩いて行った。
その後ろ姿に見えなくなるまでずっとくるみは手を振り続けた。