第9章 I am lucky
(なんで、そんなに……かっちゃんの事を…)
健気な彼女に同情にも近い感情が芽生える、爆豪をよく知っているからこその深い同情…。
緑谷はコンビニ袋を机におき、リュックの中からノートを3冊取り出した。
「縫井…さん、これ、中学生のころのかっちゃんの個性纏めてあるノート…
置いておくね?」
『わぁ…嬉しい……』
くるみは呟いたあと、クンクンと犬がするように鼻をひくつかせ、緑谷に寄った。
「ど、どうかした…?」
くるみはトロン…と蕩けた視線を持ち上げ、緑谷を見つめると、さらに近寄って体をくねらせる。
『なんか…ばくごーくんの…匂い…する…』
くるみが鼻先を摺り寄せるのは少し焦げ付いたノート、【将来の為のヒーロー分析ノートno.13】
「そういえば…この爆破、かっちゃんにやられたんだよね…」
緑谷がノートをくるみに渡すと、くるみは嬉しそうにそれを抱えて巣に戻っていった。
ノートとネクタイ、それらを大事そうに抱きしめて『ばくごうくん…ばくごうくん…』と呟く彼女が、あまりに不憫で
緑谷はジワリと泣きそうになった。
「明日も…くるから…」
そう言うと、彼女は『ありがとう…』も小さく呟いて、また身を丸くした。