第18章 Tintarella di luna 後編
………………ああ、何だ。
太陽が黒点にジワジワと侵略されるが如く、この男の闇が溢れ出すのを感じる。
眩しさに誤魔化されて、その奥に滲んでいるモノに気付けなかっただけなのだな。
私だけがこの男を欲していると思っていたが………
お互い様…というヤツか。
気が付けば鼻先が触れそうな距離まで顔を寄せ、私は不敵に口角を上げた。
「………そうですね。
では今から貴方の部屋へお邪魔しても?」
「勿論ッスよ。
あ………バニーも呼びましょうか?
アイツ…喜んで飛んで来ますよ、きっと。」
「ええ。
是非お願いします。」
これで私の闇が救われるとは思えない。
でもこの歪な関係に身を任せて揺蕩ってしまうのも悪くない。
そう…………今は。
足元のアスファルトには、満月の光に圧し出されるように長く伸びた2つの影。
ピッタリと重なるその影に、グズグズと自分が溶けていく。
2人一緒であるならば、それもまた一興だ。
私はゾワゾワと背筋を這い上がる奇妙な感覚に小さく身悶えなから、一層深くワイルドタイガーの唇を貪った。
END.