第18章 Tintarella di luna 後編
無表情を装った。
上手く出来た筈だ。
眉ひとつ動かしていない。
だけど、心臓は破裂しそうな程に高鳴っていた。
「そう……ですか?」
「ええ。
間違いないですよ。」
この男は気付いているのか?
私を陥れようとしているのだろうか?
ルナティックの正体が明らかになったとしても、何を恐れる事がある?
表の職は失うかもしれないが、私にとってそれは大した問題ではない。
なのに……何故か、この男に知られる事には死刑囚が首にロープを掛けられた瞬間のように恐れ戦いてしまうのだ。
高速で考えを廻らせ、何か言わなくてはと顔を上げた私の前髪を、ワイルドタイガーの右手がフワリと耳に掛ける。
「Mr.……」
「ね………だからやっぱり、
俺とユーリさんは一緒に居なきゃいけないンじゃないスか?
ホラ……今夜は特に。」
私の耳に掛けた手はそのままに、ワイルドタイガーは顔を寄せて来た。