第16章 if...
今……僕は、トレーニングセンターに1人きり。
声を掛けてくれたファイヤーさんも、それに同調した視線で僕を見ていた他のヒーロー達も、心配はするものの今はどうしようも出来ないという様相を隠さないまま帰って行った。
確かにファイヤーさんの言う通りだとは思う。
ワイルドタイガーを失って打ち拉がれているのは僕だけじゃない。
仲間としての関係ならば僕よりも他の皆の方が長いワケだし、ロックバイソンさんとは学生時代からの腐れ縁だと聞いている。
だけど僕に取っては、虎徹さんは全てだった。
彼を心の底から愛していた。
虎徹さんのためなら自分の命を捨てる事だって厭わないくらいに。
じゃあ、その立場が逆になっただけじゃないかと言われるかもしれないけど、僕の中では虎徹さんを失うなんて欠片も思い付かなかったんだ。
そんな僕を他人が理解出来るハズがない。
今の僕には『食事』と『睡眠』は只のルーティンワークだ。
何を食べたってまるで砂を噛んでいるようだし、瞼を閉じれば虎徹さんの姿が延々と浮かぶだけ。
『食事』も『睡眠』も僕には必要無いけれど、他にやる事もないのでやっているだけ。
ああ……いつまでもここに居たって何も変わらない。
今日もまたルーティンの始まりかと観念した時……
「ハンサム………まだ、居る?」
ブルーローズがトレーニングセンターへ戻って来た。