第1章 Red Lip
いつも通りの日だった。
いつも通りに事件が発生し、いつも通りに僕達ヒーローが出動する。
シュテルンビルド最大のジュエリーショップ。
そこに5人の強盗が押し入ったらしい。
だけど僕とワイルドタイガーこと虎徹さんが現場に到着した時には、もう犯人は全員他のヒーロー達に捕まってしまっていたんだ。
キングオブヒーロー、スカイハイが3人を逮捕。
ブルーローズとファイヤーエンブレムが1人ずつ。
当然僕達にポイントは付かない。
全く……どうして会社は虎徹さんとコンビを組めなんて言い出したのか。
僕一人だけで活動した方が余っ程ポイントを稼ぐ事が出来るのに……。
「ハアァァッー…」
もう犯人もヒーロー達も居ない店内を見渡して僕が大袈裟に溜息をつくと
「なっ…なんだよ、バニー!
犯人を取り逃がしたのは、またオレのせいだって言うのかよ!?」
隣で虎徹さんがふて腐れて応えた。
「ああ、一応ご自分で理解はされているんですね?
貴方がグズグズしている間にこのザマですよ。」
「なーんだよォ…そのイヤミな言い方!
ホント、バニーちゃんって可愛くねーよなァ。」
「可愛くなくて結構です!
それからっ、僕の名前はバニーじゃなくてバーナビー……」
「オイッ……?」
僕が言い終わらないうちに虎徹さんは駆け出す。
虎徹さんが向かう方へ視線を向けて見れば、強盗に荒らされた店内を片付けていた一人の女性スタッフが踞っていた。
………本当に虎徹さんって困った人だな。
でも……どんな些細な事であっても、救いを求める人が居れば直ぐに駆け出せてしまうこの人の事を、僕は……。