第14章 君の手をひいて歩く僕の未来
玄関のドアロックが開く音がする。
この部屋のロックを開けられるのは僕と、マンションのコンシェルジュと、もう1人………
さんだけだ。
僕が弾かれたように立ち上がった所で、さんがリビングに入って来た。
「ただいま。」
そう言ってニッコリと笑うさんの姿に、僕は不覚にも涙が滲んでしまった。
「あの……今日はどうしてインターホンを鳴らさなかったんですか?」
「……ダメだった?」
「いいえ!
寧ろ……嬉しいんですけど……」
「ふふ……良かった。
もうね、バーナビーに遠慮するのは止めようと思って。」
2週間振りに見るさんの愛らしい笑顔に胸が締め付けられる。
「………今日はどうして?
もうさんはここには来てくれないと……」
「会いたかったの。」
「え……?」
「ずっとバーナビーに会いたくて……
もう我慢出来なかったんだ。」
何だろう?
今日のさんはいつもと違う。
いつもは僕と一緒に居ても、どこか不安そうな表情をしていて……
それがどうしようも無く僕を焦らせた。
こんなに好きなのに、こんなに大切に思っているのに、どうしてって……。
だけど今のさんはどこか吹っ切れたみたいで……とても綺麗だ。
「ね、バーナビー……
聞いて欲しい事があるの。」
「何ですか?」
真っ直ぐに僕を見上げるさんを促して窓際へ腰を下ろす。