第12章 LOVE SAUCE 後編
「虎徹さん?」
「んぅー……」
「大丈夫ですか、虎徹さん?」
「んんぅー……」
「はああ……
しっかりして下さいよ、ホラ。」
「………おみじゅ。」
「はい?」
「おみじゅ……ちょーらい。」
…………お水、ちょうだい?
ベッドにぐったりと横たわったまま、僕を見上げてニコニコと笑いながらお強請りする虎徹さん。
本当に全く、本当に本当に………
何て可愛いんだ、この人はッ!!
オジサンのクセに!
もう1回言う!
オジサンのクセにッッ!
可愛さ余って憎さ百倍というのは正しくこの事だな…と、僕はイライラしながらキッチンへ向かった。
そして冷蔵庫から取り出したペリエを持って虎徹さんの元へ戻る。
その栓を抜けばシュッ…と音を発てて漏れる炭酸ガスが僕の気持ちとシンクロした。
一瞬の内に漏れて、溢れて……
でも次から次へと湧き上がる。
……………このペリエは『僕』だ。
「虎徹さん……飲めますか?」
ああ……僕がペリエを取りに行っている間に眠ってしまったみたいだ。
………少しだけ不規則な寝息。
水が欲しい……
貴方はそう言いましたね?
胃の中のワインを薄めてやる必要もあるでしょう。
決して邪な欲望じゃない。
貴方の欲するものを、貴方の身体を考えて………
僕は『僕』を口に含むと、虎徹さんの唇に自分の唇を重ね………
少しずつ、零れないように少しずつ………
貴方の中に『僕』を注いでいく。