第10章 真夏の夜の訪問者 前編
そこにあったのは、人形だった。
赤ん坊くらいの大きさで、寝かすと瞼を閉じて抱き起こすと瞼を開ける……
そう、小さい女の子が遊ぶミルクのみ人形。
だけど俺の目を釘付けにしたのはその異様な風体だ。
外ハネの巻き毛ブロンド。
本革で出来た赤いライダースジャケットを着て、ワークパンツにブーツまで履いている。
ご丁寧にネックレスと眼鏡まで………
『………オイ、嘘だろ?』
何故か薄ら笑いを浮かべた俺が、その人形を持ち上げれば………
ブロンドの睫毛が着いた瞼が開き、そこから覗くのは……あのガラス玉のグリーンアイ。
どう考えたってコレ、バニーを模して作られてるだろ!?
いや、違うんだ……違う違う。
《模して作られている》なら、何も問題ねえ。
何より俺が怖いのは、この人形の重さだ。
まるで本物の赤ん坊を抱いているような重さ。
じっとりとした赤ん坊独特の湿り気まで感じられる。
そしてそのセルロイドで出来た肌は、触れた俺の指先に吸い付くような弾力と潤いを持っていたんだ。
『バニーーーッ!!!!』
コレ………バニーだ!!
一体どうして!?
………NEXT?
思えば昨夜、家に来た時から様子が可笑しかった。
どこかでNEXT能力の影響を受けたのか?
とにかく先ずはその能力を限定させねーと、解除方法だって分からねえ。
斎藤さんと、ロイズさんに電話………
ダメだ、俺……声出ねーじゃん!
『待ってろよ、バニー!』
俺は全身の痛みも忘れ急いで着替えると、大切に《バニー》を抱き抱えてアポロンメディアへ向かった。
to be continued……
この続きはらっこR様の
『君とならキスだけじゃ【TIGER&BUNNY】』
「第11章 真夏の夜の訪問者 後編」
でお楽しみ下さい。