第9章 君の手をひいて
「ふふ……
何が見えたかは聞かないでおきますが………」
「きゃッ……!」
バーナビーは唐突に私をお姫様抱っこして
「帰りましょうか。
今さんが見たヴィジョンを現実にしなくちゃ。」
嬉しそうに歩き出した。
建物を出て、人が行き交う大通りを歩いているのにバーナビーは私を下ろそうとしない。
当然周囲の人達の視線は、バーナビーと私に釘付けだ。
「あの……私、一人で歩けますから……
下ろして……」
「その意見は却下します。」
「でも………」
「僕がさんを抱いていたいんです。
もう貴女を他の男に拐われるのは御免ですからね。」
「えええ………」
きっと私はふにゃっと困り顔をしたんだと思う。
それを見たバーナビーはいきなり私の額にキスをした。
「ホント……さんは可愛いな。」
「ええええ………」
嬉しさと恥ずかしさと驚きと……とにかく色んな感情に突き上げられジタジタと見悶える私を、バーナビーはグッと抱え直してニッコリと笑う。
そして……………
「これは言わないつもりだったんですけど……
僕はさんの能力が目当てではなかったと言いました。
だけど本当のお目当てはね………
毎日さんの手を握る事だったんですよ。」
END.