第2章 俺は何も知らない
「やべっ!明日提出の課題机ん中入れたまんまだ!」
「赤葦も委員会で遅れるらしいし、取って来たら?」
「そうするわ。木兎わりい、ちょっと遅れるかも」
「早く帰ってこいよー」
部室でジャージに着替える時に気づいて、慌てて教室に向かう。
あーあ、なんだかついてねえな。
教室で自分の机を漁って課題を探し出すと、それを持って今度はゆっくりと体育館に向かう。
急いでも急がなくても、もう同じかなー
2年のクラスが並ぶ横の廊下を通った時、ふと1つの教室から話し声が聞こえた。
男の声と女の声…告白か?リア充かよ!
通り過ぎようとしたところで、その声に聞き覚えがあることに気づく。
あれ?この声…
少しだけ開いてる扉から中を覗くと、やっぱりだ。
窓際に居るから、俺が見てることなんて気づいていない。
てか、向かい合って話してんの赤葦じゃん。
2人は立ったまま何かを話してるけど、少し距離があるから会話の内容までは聞き取れない。
でも耳を澄ますと、途切れ途切れだけど微かに聞こえる。
「って……ね」
『え、……の?』
「……だ……ね」
赤葦が何か言ったのか、が驚いている。
『赤葦くん、あのね……す…なの』
「えっ…」
今度はの言葉に赤葦が驚く。
「この……は、……の?」
『……だって、……ないの』
少し焦る赤葦に、首を振りながら否定する。
そんなの頭を優しく撫でる赤葦。
あー…そういうことか。
とっくにの気持ちは俺じゃなくて、赤葦に向いてたのか。
なんか…むしゃくしゃする。
俺は静かにその場を離れて、走って体育館に向かった。
やっぱり今日はついてねえな。