第5章 streetPass
「何?映画出るの⁇」
「うん!すごいいい話だよ。」
台本見る?と渡すと無言で受け取って読み始めた。
「……ラブシーン、あるの⁇」
「1回だけ!」
ファーストキスなんだけど…とボソっと呟いた言葉が
天に届いたのかはよく分からない。
「……あすか、前髪ゴミついてるから目瞑って。」
「えっ、嘘。わかった!」
ソファに寝転がって台本読んでたから、
毛玉ついちゃったかな⁇と思って素直に目を瞑ると、
いつまで経ってもゴミを取ってくれる気配がない。
流石に遅い、と思って目を開けると、
天の顔が、目の前にあった。
キスをされた、って理解したのは、
しばらく経ってから。
そっと、顔を話すと
ごめん、とだけ残して天は楽屋を出て行った。
顔が離れる際に、呟いた天の言葉を、私は聞き逃さなかった。
____『誰かにとられるくらいなら…』_
…変に期待、させないでよ。