第18章 8月 Ⅴ
「三匹ぐらいでいいだろ?」
『貰えるの?』
ビニールの小さな袋に入れられた金魚はを顔の高さにまで持ち上げ、無邪気に喜ぶアリス。
『ありがとう!大事に育てるね!』
「他にやりてぇのは?」
んー?とキョロキョロ周りを見たアリスが、あれ!と指差したのは射的。
そこでも青峰が大活躍で、屋台の親父を困らせた。
結局、彼女が欲しがった景品だけを貰い、次は綿飴が食べてみたいと屋台を回る。
しかし、楽しめたのはそこまでだった。
履き慣れない下駄の鼻緒で足が痛い、とアリスは苦笑いを浮かべたのだ。
人混みの中を歩く事が難しくなってきた、と申し訳なさそうに言うアリス。
「ま、しゃーねぇな。少し早いが行くぞ。」
『どこに?』
「もう少し歩けるか?」
ゆっくりなら、と言うアリスの手をしっかり握ると青峰は神社の境内を抜け社の方へと向かった。
参拝客の休憩用に置かれているベンチにアリスを座らせると、青峰はスマホを手に何かを気にしている。
アリスは今のうちに少しでも足の痛みへの対応をしようと下駄を脱いだ。
「見せてみろ。」
『大丈夫だよ、脱いだら痛くない。』
「いいから見せろよ。」
『ちょ!きゃあ!!』
前に座り込んだ青峰に強引に足を持ち上げられ、後ろにひっくり返りそうになる。
しかし、背凭れがそれを阻止してくれた。
あたふたするアリスを見て大笑いする青峰に、『ひどい』と一言。
「赤くなってるな。帰りはおぶってやろうか?」
『大丈夫です!』
そんな事より早く足を下ろさせてほしい。
持ち上げられたせいで浴衣の合わせがはだけてきている。
「なんつーか、すげぇエロい。」
『!!』
ニヤッと笑う顔をそのまま蹴飛ばしてやろうかと思ったが、アリスの動きは止まった。
その笑顔の後ろに花火が上がったのだ。
青峰はどうやら打ち上げ時間を確認していたらしい。
社を囲う木々の上に花開くそれは、まさに日本の夏の風景。
『何度見ても感動しちゃう。』
そっとアリスの足を下ろした青峰も隣に腰を下ろしてそれを眺める。
「お前と一緒に見たかったんだ、花火。」
『ありがとう!浴衣も屋台も凄く楽しかった。』