第18章 8月 Ⅴ
ビルの間から見た時ほどの迫力はないが、周囲の風景に馴染む今夜の花火の方が好きだとアリスは思っていた。
そして今日、誘ってくれた青峰に何かお礼がしたいと考える。
金魚も射的の景品も、綿飴も。全部貰ってばかり。
『ねぇ青峰君。私は何をお礼したらいいかな?』
「いらねぇよ。」
『私がしたいの!』
誕生日の夜を一緒に過ごせているだけで十分だと言ったら、彼女はどんな顔をするだろうか。
「そうだな、ならお前。」
『ん?』
青峰は真っ直ぐにアリスを指差す。
その意味が分からず、彼女は困ったような表情を浮かべた。
「なんかくれんだろ?」
だったらお前がいい、そう言うとアリスを強引に引き寄せる。
されるがまま、ポスンと腕の中におさまる彼女。
『青峰君?』
この状態で顔を上げるのは反則だ。
いつかは笑われ出来なかったが、今は何の躊躇なく出来てしまった。
チュとリップ音を立てて離れる唇。
抵抗がないからその先も、と胸元へ手を侵入させようとする。
『…ここ、外だよ?』
「関係ねぇよ。お前が欲しい。」
『関係あるよ!』
やめて!とアリスは青峰の胸を押し返した。