第17章 8月 Ⅳ
しかし、視界の死角などそう簡単に見つけられるものではない。
相手の体格や自分との体格差で大きく変わるはずだ。
「そうですね、試す価値はありそうです。」
結局、この山合宿中だけでは黒子の考える新技は完成しなかった。
帰りの電車の中、今後も練習相手を頼みたいと黒子は改めて頼む。
『私はかまわないよ。』
部活での練習の後、居残り練習出来る時間は限られている。
夏休み中にわざわざ学校に来させなければならないのは申し訳ないが、今は少しでも自分の力を、自分の出来る事を増やしたい!と黒子は真剣だった。
合宿で疲れているだろうから、と家まで送ると言ってくれた火神と黒子に『大丈夫だから!』とアリスは一人で駅に立つ。
「アリスちゃん!」
自宅に向かって歩き出した所に声をかけられた。
長い髪を揺らしながら、駆け寄って来た桃井は同性のアリスから見ても可愛らしい。
『部活帰り?』
「そうなの!今日もだいちゃ、青峰君はサボって来なかったから…。」
ほら、と桃井の視線の先には背の高い桐皇学園の制服を着たメガネの男子生徒が胡散臭い笑顔で手を振っていた。
その顔には見覚えがある。
桐皇学園バスケ部主将、今吉翔一。
桃井は今吉と今から青峰の家に行く所だったと話した。
「思っとったよりも別嬪さんなやぁ〜。なんやお人形さんみたいや。」
アンタが青峰お気に入りのアリスちゃんやろ?と初対面なのに気さくに話しかけられた。
『はじめまして。』
笑っているけれど笑っていない。
まるで品定めをされている様な感じがする。
「今吉や、よろしゅ〜な。」
『如月アリスです。』
握手をしようと差し出された大きな手は、やっぱりバスケットをやっている人のそれだった。
「そや!ここで会ったのも何かの縁や、青峰んとこ一緒に行こうや。」
その方がアイツも喜ぶやろ、と今吉は人の良さそうな笑顔で言った。
桃井も「そうですね!」と彼の提案に好意的。
特別用事があったわけではないが、合宿帰りで人様の家に行くのは気がひける。
『あの、今日はちょっと。』
この荷物もあるので、と引いていたキャリーバッグに視線をアリスは落とす。
「ほな、ワシがそれ持ったるわ。」
『ぇ?!』