第15章 8月 II
「約束って、水着の話か?」
『あれ?違いましたか?』
「いや。違わねぇけど、その。いいのかよ。」
『嫌だったら言いませんよ。』
アリスはクスクス笑った。
何故こうなった、今日はアリスから誘われて出掛けるはずじゃなかったのか。
待ち合わせ場所に居たのは、アリスだけでなく、黒子に抱き付いてはしゃぐ桃井、火神までいたのだ。
『青峰君、遅刻。』
水色のストラップのシャツワンピースをウエストで大きなリボンを結んでいた。
制服ともラフな服装とも違う、お出かけ用の装いのアリスは早く!と手を振っていた。
「…さつき、てめぇの仕業か!」
人を殺せそうな鋭さで桃井を睨む青峰に、アリスはそれを遮る様に彼女の前に出た。
『青峰君、まだ病院に行ってないんでしょ?』
今回の待ち合わせは最初から計画されていたものだ。全部、青峰を病院に連れて行く為に。
火神はもし力ずくで青峰が逃げようとした時の為に頼んで来てもらっていた。
そして何よりも、今回の計画、最大の餌はアリスだ。
「お前もグルかよ!」
『青峰君、プール行くんでしょ?だったらちゃんと診てもらって!』
怪我してたら楽しめないでしょ!とアリスは強い口調で言った。それには流石の青峰も怯む。
『じゃあ行こう。』
「ちょ、おい。」
青峰の手を取ると歩き出すアリス。
たぶんこの様子ならここから逃げ出す事は無いだろう。
なんせあんなに不機嫌丸出しの顔をしていたのに、アリスに手を掴まれ、繋いで歩かれている今の彼にその面影すらない。
「じゃあ僕達は次の準備をしましょう。」
「ったく!こんな事に付き合ってやんのはこれっきりだからな!」
蝉が煩く鳴き叫ぶ中、三人は次の目的地へと移動した。
ツンと鼻をつく消毒の匂い。
清潔感に溢れている待合室で診察の順番が来るのを待っていた。
整形外科はあまり待っている患者はおらず、長時間待たされる事は無さそうだ。
『ゴメンね、怒った?』
「別に。怒ってねぇよ。」
よかった、とアリスは心底安心したと表情を緩めた。
そんな顔をされたら怒れるわけない。
『青峰君は幸せだね、みんなに心配されて。』
「そうか?お節介なだけだろう。」
『素直じゃないなぁ。』