第14章 8月
アリスは2号を抱き上げ、観客席へと向かった。
「long time no see. Have you been doing well?」
(久しぶりだね、元気にしていたかい?)
『Tatsuya⁈ Why are you here?』
(タツヤ?!どうしてここに?)
突然降り出した雨で試合は中断。
みんなにタオルを届けようと向かった先で会ったのは氷室辰也。
あまり感情の起伏のないその目にドクンドクンと心臓が口から飛び出してきそうに激しく動く。
「I was still playing basketball.」
(まだバスケやってたんだな。)
『………。』
動揺を隠せないアリスとは違い、普通に再会した事を喜ぶかのような氷室。
そっと彼女に近付き向こうでの挨拶のようにふわりとハグをする。
「What was the impression that you ran away to Japan?」
(日本に逃げ帰った感想は?)
氷室の言葉にアリスの身体はピクリとも動けなくなった。
止まる、思考が、時間が、世界が。
たった一言で頭の中が真っ白にになった。身体を巡る血液も流れ出て行くだけの様に感じて、外の音も人の声も聞こえない。
他にも氷室は何か言っていた様な気がしたが、全くアリスには届いていなかった。
「…さん、アリスさん!」
2号の肉球がプニッと頬を突いた。
「どうかしたんですか?」
『…ぇ。えっと。あれ…。』
降り続く雨でイベントは中止。
この後どうするかと話していたらカントクから学校に来いと連絡がきた。
アリスはどうするのかと姿を探せば、茫然と立ち竦む姿を見つけた。
いくら声をかけても返事がなく、今までは必ず存在に気づいてくれていたのにおかしいと2号を抱き上げた。
自分だけではなく、2号の事も認識していないらしく、頬を突いてやっと気がついてくれた。
「どうかしたんですか?」
『ううん、何でもない。ゴメン、ちょっとボーっとしてた。』
大変、2号びしょ濡れよ!とらしくない程に無理矢理誤魔化している。
嫌な予感がする。
火神の義兄弟と言うことはたぶんアリスとも関係があるはずだ。
「今から学校に行くんですが、アリスさんはどうしますか?」