第13章 7月 Ⅲ
突然ディフェンス体勢で前に飛び込んで来たアリスに、「いいじゃねぇか」と青峰は至極嬉しそうな顔をした。
が、次の瞬間。
ボールはあっさりとアリスに奪われた。
激しい痛みが腕に走ったのだ。
『やっぱり。腕、見せて!』
「んだよ、何でもねぇよ!」
『いいから見せて!!』
駄々っ子の様な青峰の態度に、アリスは強引に彼の腕を掴んだ。
「痛ぇっ!」
『やっぱり痛いんじゃない!見せて!!』
声を出してしまった以上、仕方がないかと青峰はぶっきら棒に腕を伸ばした。
それだけでも鈍い痛みがある。
アリスはそっと手を添えて、青峰の肘を少し動かしてみる。
「だから大したことねぇよ。」
『少し腫れてるみたい。青峰君、帰ろう。冷やさなきゃ、コールドスプレー持ってるでしょ?』
そんなもの使う程、今まで本気を出す様な事はなく練習にもほぼ不参加だった。
「ねーよ、俺には必要ねぇから。」
『なら氷とタオルか。兎に角、今すぐ家に帰ること!』
「はぁ?なんでだよ。」
帰れ、帰らない、の言い争いになってしまう。
何が理由で帰りたがらないのか全くアリスにはわからない。
だが、だからとこのままここに青峰を置いていったら悪化させるのは目に見えている。
『わかった、じゃあウチに帰ろ、ね。』
決まり、と青峰の反論を許さないとアリスは彼の痛がらない方の腕を掴んで歩き出そうとする。
「んだよ、おい!」
『青峰君が帰りたくないなら仕方がないでしょ!』
アリスは怒っていた。
転がっているボールを拾い、しっかりと青峰を掴んだままコートを出た。
本当はアリスの家に行くよりも青峰の家の方がここからは近いのだが、それを彼女は知らない。
玄関の前にまで来るとやっと手を離したアリスは『逃げないでよ』と一言。
「逃げねぇよ。」
観念したよ、と青峰は肩を落とす。
鍵を開けたアリスは早く入れと促した。
リビングに通され、アリスは何かを取りに自分の部屋に上がっていってしまった。
前にここに来た時よりも少し雰囲気が違う。
人が居る形跡が色濃い感じだ。
ソファーにドカッと腰を下ろすと、ローテーブルにはやりかけのテキストが置かれていた。
『ちゃんと病院に行った方がいいよ?』