第13章 7月 Ⅲ
「…アリスっち、手、つないで。」
『今日だけだよ?』
本当にこのイケメン大型犬には弱いとアリスは思った。
しっかりと繋がれた手は大きくて、そしてやっぱり彼もバスケが好きなんだとわかるゴツゴツしたものだった。
「ウインターカップは絶対負けないっス!」
『そうだね、頑張ってね。』
今度こそかっこよく勝って、アリスに告白するんだ!と黄瀬は決意を新たにした。
帰宅したアリスは久しぶりの一人の夜にほんの少し寂しさを感じていた。
宿題合宿に海合宿と、しばらく誰かと一緒に過ごしていた反動だろう。
荷物を片付けたアリスは、それを紛らわせようと久しぶりに走る事にした。
決して青峰に太ったと言われたからではない、と自分に言い聞かせる。
今夜は2号もいない。
しっかり鍵を閉めてイヤホンを繋ぐ。
走るときは必ずアリスは音楽を聴いているのだ。
アップテンポの曲に合わせて走る。
そして習慣になってしまっているあの公園へ。
「よう、来ると思ってたぜ。」
『あ、こんばんは。』
今夜は先客がいた。
きっと彼はまだ試合の余韻が残っているのだろう、ボールを手に一人でバスケをしていた。
あれだけ激しい攻防戦のあとだ、昂ぶった気分が治らない事はわかる。
しかし、また相手になれと言われたくないとアリスはすぐにコートを出ようとした。
「逃すかよ!」
『…青峰君、強引過ぎです。』
彼の投げたボールが出入り口を閉めた。
目の前で閉まったフェンスの扉、足元に転がって来たボールをアリスは仕方なく拾った。
そのまま青峰に向かって投げる。
「別に相手しなくていいからよ、そこで見てろ。」
なんだその要求は、と思いながらもアリスはコートの横に座る。
それを確認した青峰は満足そうな顔をした。
ドリブルからのレイアップ、ドリブルからのダンクと珍しく自ら練習を始めた。
なんでこんな事してるんだろ、と呆れながら彼のそんな姿を見ていたアリスは、ふと違和感を感じた。
試合で見ていた時とは何かが違う。
『あ、もしかして…。』
違和感の原因に一つ思い当たる所を見つけたアリスは、立ち上がると青峰に駆け寄った。