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君と僕とが主人公LS

第13章 7月 Ⅲ


たぶん彼はここに向かいながら走って来たに違いない。
彼の匂いがやたら残っていた。
このまま誠凛のみんなの場所には戻ってはいけないような気がして、アリスは一人離れた場所からコートを眺める。
黄瀬はあのメッセージを読んだのだろうか。
どことなく、いつもよりテンションが高い様に見える。
試合開始のブザーが鳴る。
黄瀬対青峰のどちらも一歩も引かない攻防戦は圧巻の一言。
これがキセキの世代と言われるプレイヤーの本気なのか、とアリスはやっと凄さを思い知った様な気がした。
試合終了後、誠凛のみんなと合流したアリスは用事があるから先に帰ってくれと伝えた。
一人会場に残ったアリスは、きっとまた隠れて泣いているだろう黄瀬を探す。
海常の仲間達と一緒に出てきた黄瀬は俯いていた。
アリスに先に気が付いたのは笠松で、下ばかり見ていてまだ彼女に気が付いていないだろう黄瀬を肘で突いた。


「折角応援に来てくれたのに、かっこ悪いとこ見せちゃったッスね。」


青峰っちにかっこ良く勝つところを見せたかったのに、と黄瀬は今にも泣きそうな顔で笑う。
わざわざチームメイトから離れ駆け寄ってくれたのは嬉しいが、アリスはかける言葉が見つからずに焦っていた。


『お疲れ様。』


そう言ってアリスは今回は自分のタオルを黄瀬に差し出した。


「…っアリスっち〜!!おれっ、勝ちたかったっス〜!!」


まるで糸が切れた様に黄瀬はアリスに縋る様に泣き崩れてしまった。
ここにはもう誰もいない。
だから思う存分泣いていい。
よしよしと子供をあやすようにしっかりと黄瀬を受け止めるアリスの服が、涙で濡れてしまう。
泣き顔を見せたく無いと、彼女の肩に顔を埋めた黄瀬。
こうなるとわかっていたのだから、用意するべきは冷たいタオルだったかな、とアリスは考えていた。


「なんかホント、アリスっちには情けないとこばっかりっスね。」


モデルなのにそんなに目を腫らして、とアリスは水道で濡らしてきたタオルを渡した。
一通り泣いてスッキリしたのだろう、いつものノリを取り戻した黄瀬は言った。


『負けて悔しいのは当たり前だよ。』


海常の他のメンバーは黄瀬に気を使ったのか先に帰ってしまっていた。
二人で陽の傾き始めた道を歩く。
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