第12章 7月 II
その手にはスマホが握られており、何事かとチームメイト達も心配そうに視線を向ける。
「どうかしたのか?」
休憩で汗を拭っていた笠松は黄瀬の手元を覗きながら声をかける。
「センパイ!見て下さいよぉ〜!」
ズイっと突きつけられたスマホの画面には、誠凛の連中と黄瀬のお気に入りの女子が写っていた。
「黒子っちと火神っちばっかズルいっス!俺もアリスっちの水着姿見たいっス!!」
笠松は無言でスマホを取り上げると乱暴に電源を落とした。
あー!と半べそをかく黄瀬を無視して練習再会の号令をかけた。
同じ頃、相変わらず練習に参加せずサボってゴロゴロしていた青峰は、やることもなく空を見上げていた。
夜、女子は二人しかおらず必然的にカントクと相部屋になったアリスは難しい顔でノートと睨めっこしている彼女に声をかけた。
『リコ先輩は自分ではバスケはやらないんですか?』
「やらないわけじゃ無いわ、でもこっちの方が楽しいのよ。」
きっと全日本代表の父親の影響で、プレイヤーとしても期待されていた事もあったはず。
しかし、それを一切引きずらずに監督業に努める姿は尊敬しか出ない。
「アリスちゃんも色々大変だったんだろうけど、また、いつかやれるといいわね。」
『…そう、ですね。』
ここ何日間かバスケが近い場所にあり、やっぱり自分はそれが大好きなんだと実感していた。
けれどまだ、自分自身でプレイする事には抵抗がある。
なんとなく気まずくなり、アリスはジュース買ってきますと部屋を出てしまった。
『黒子君?』
タイミングよく震えるスマホ。
「今から少し付き合って貰えませんか?」とメッセージが届いていた。
OKと可愛らしいクマのスタンプで返事をしたアリスは、次のメッセージを待つ。
『あ、黒子君。』
「返事、必要なかったですね。」
偶然にも自販機の前で遭遇し、二人で笑ってしまった。
買ったジュースを手に宿を出て目の前に広がる砂浜まで散歩に出た。
夜の海は静かで、昼間の暑さは嘘の様に風が心地よい。
「実はちょっとお願いがあって。」
『私に出来る事?』
「はい、たぶん。」
寄せては返す波を前に並んで座る。
月明かりが波にキラキラと反射してとても綺麗だ。
そこまで話したが、先を口にする事を黒子は躊躇っている。